マラソンやジョギングは心身の健康に良い影響を与える素晴らしい運動ですが、ヒザの痛みや違和感に悩まされている方も少なくありません。
走るときに感じるヒザの痛みや違和感は、ランニングを楽しむ上で大きな障害となるだけでなく、無理に走り続けるとさらに深刻なケガに発展したり、走ることができなくなる可能性もあります。
この記事では、ヒザの痛みの原因やその種類、さらに予防法について詳しく解説します。正しい走り方やストレッチなどの予防法を試すことでヒザの痛みを防ぎ、安心して長くマラソンを楽しめるようにしましょう。
ランナーのヒザの痛みの原因や症状
ヒザの痛みは、ランナーにとってよくある悩みの一つです。ヒザはランニング時に非常に大きな負担を受ける部位であり、特に長時間の運動や間違ったフォームで走ると痛みが発生しやすくなります。ヒザは衝撃を吸収する役割を担っているため、ランニング時には特にケアが必要です。ヒザの症状はさまざまですが、炎症症状の典型的な例として以下のようなものが挙げられます。
・鋭い痛み
急に発生し、特定の動作で強く感じる痛み。
・鈍い痛み
走っている最中や、走った後に徐々に現れる違和感や痛み。
・腫れや熱感
ヒザの周りが腫れるケースや、触れると熱感を感じる。
ヒザの痛みは、急性のケガによるものと慢性的なものに分けられます。マラソンで生じるヒザの痛みの原因と予防法を理解し、症状に対して適切な対処法を行うことで、長く楽しく走り続けることがでます。
マラソンやジョギング中に発生しやすいヒザの痛みの主な原因
ヒザの痛みの原因は複数あり、それぞれに適した対策が必要です。ここでは、マラソンやジョギング中に発生しやすいヒザの痛みの主な原因を紹介します。
1. オーバーユース(ヒザを過度に使用)
ヒザの痛みの最も一般的な原因は、過度にヒザを使用した状態を指すオーバーユースです。長時間走り続けることや、適切な休息を取らずに頻繁に走ると、ヒザの関節や筋肉に負担がかかり、炎症や痛みを引き起こすことがあります。これは「ランナー膝」とも呼ばれる症状で、膝蓋骨(膝のお皿)周りに痛みを感じることが多いです。
2. 間違ったランニングフォーム
不適切な走り方もヒザに大きな負担を与えます。踵から着地するヒールストライクや、歩幅が大きすぎるストライドはヒザにかかる衝撃を増加させ、痛みを引き起こしやすくなります。
3. 筋力の不足によって膝に負担がかかる
ヒザを支える周囲の筋肉である大腿前面の大腿四頭筋や、後面のハムストリングス、臀部の筋肉が十分に強化されていないと、ヒザにかかる負担を分散できません。また、股関節周りの筋肉が弱いケースでもヒザが不安定になり、痛みの原因になる可能性があります。
4. 合わないランニングシューズ
ランニングシューズの選び方が間違っていると、足やヒザに負担がかかります。クッション性が足りないシューズや、自分の足の形に合っていない靴を履くと、ヒザの痛みを引き起こす可能性が高くなります。
ランナーによく見られるヒザの痛みの種類
ヒザの痛みにはさまざまな種類がありますが、ランナーによく見られる代表的なものをいくつか紹介します。
1. ランナー膝(膝蓋大腿痛症候群)
ヒザのお皿周りに痛みを感じる症状で、特に階段を下りるときや座った状態から立ち上がるときに強い痛みが現れます。長時間のランニングや不適切なフォームが原因で、膝蓋骨が正しく動かないことで痛みを引き起こします。
2. 腸脛靭帯症候群
ヒザの外側に痛みを感じる場合は、この症候群が原因であることが多いです。長距離ランナーに多く見られる症状で、膝の外側を走る腸脛靭帯が炎症を起こすことで痛みが生じます。
3. 半月板損傷
膝関節内にあるクッションの役割を果たす半月板が損傷することで痛みが発生します。急激な方向転換や膝に大きな負荷がかかる動作が原因で、痛みや腫れを伴うことがあります。
ヒザの痛みを予防するためのストレッチとトレーニング
ヒザの痛みを予防するためには、走る前後のストレッチや適切なトレーニングが非常に重要です。ここでは、ヒザへの負担を減らすためのストレッチと筋力トレーニングを紹介します。
1. 走る前のダイナミックストレッチ
ランニング前にはダイナミックストレッチを行い、筋肉や関節をしっかりと温めましょう。これにより股関節やヒザの可動域が広がり、怪我のリスクを軽減させます。
・レッグスウィング
片足を前後にスイングさせて股関節とヒザを動かします。これにより、関節周囲の筋肉がストレッチされ筋肉が発揮する出力が増します。
・ランジウォーク
歩きながらランジ動作を繰り返し行うことで、股関節やヒザ周りの筋肉を伸ばし、関節可動域を向上させます。
2. 走った後の静的ストレッチ
ランニング後には、静的ストレッチを行うことで疲労した筋肉をしっかりと伸ばしましょう。筋肉内の血液循環を改善させ、柔らかく保つことでヒザにかかる負担を軽減します。
・ハムストリングスのストレッチ
床に座り両ヒザを伸ばした状態から、上半身を前屈させ太ももの裏にあるハムストリングスを伸ばします。
・大腿四頭筋のストレッチ
立位で片足を後ろに引きながらヒザを曲げ、臀部の後方で足の甲を持った姿勢となり太ももの前側にある大腿四頭筋を伸ばします。
3. 筋力トレーニング
マラソン動作時のヒザへの負担を軽減させるには、股関節やヒザ周囲の筋肉を強化することが非常に大切です。以下のトレーニングを日常的に取り入れてみましょう。
・スクワット
肩幅に両足を開いた状態で立ち、ヒザがつま先より前方に突出ないように注意し、骨盤を後方に移動させながら股関節とヒザを曲げてスクワットを行う。
・ヒップアブダクション
横向きに寝た姿勢となり、上方にある片足を上に持ち上げ、股関節外側面にある中殿筋の筋力トレーニングを行う。
ヒザへの負担を軽減させる正しい走り方でヒザの痛みを予防しよう
ヒザの痛みを予防するためには自分自身の走り方を見直し、正しいフォームを習得することが不可欠です。間違ったフォームで走り続けると、ヒザに余計な負担をかけ、痛みやケガを引き起こすリスクが高まります。
以下に、ヒザへの負担を軽減させる正しい走り方について詳細を解説します。マラソン時のヒザの痛みで悩んでいる方は、これらの対処法をぜひ試してみてください。
1. 正しい姿勢・正しいフォームで走る
・背筋を伸ばす
走行時に体幹を垂直に保つことで、ヒザにかかる力を分散させ、過度な負担を抑制させます。目線は前方を向け、首や肩をリラックスした状態を意識しましょう。
・肩のリラックス
肩が力んでいる走り方は全身の動きが硬くなり、ヒザの柔軟な動きに制限がかかります。肩はリラックスし、腕は自然に振るよう心がけましょう。腕の振りが足の自然な振り出しを助け、その後のヒザへの衝撃を和らげることが期待できます。
2. 着地の仕方を意識する
・フォアフットまたはミッドフット着地
ヒザの痛みを予防するためには、足の前方部分(フォアフット)または、中間部分(ミッドフット)で着地することが重要です。踵から着地すると、ヒザにかかる衝撃が大きくなるためできるだけ避けてください。ミッドフット着地は、体のバランスを保ちながらヒザへの負担を最小限に抑えることができるためおすすめです。
・着地時の音を意識する
着地時に足音が大きい場合は、衝撃を上手に吸収できておらず、強くヒザに負担がかかっている可能性があります。走行時の足音が小さくなるよう、ソフトに着地することを意識しましょう。
3. 短めのストライド(歩幅)を意識
・ストライド(歩幅)を小さくする
歩幅が大きすぎると、着地時にヒザにかかる衝撃が大きくなります。歩幅を小さめにして、足を素早く回転させる走行を意識することで、ヒザへの負担が軽減されます。
・体の真下で着地
足が体の前に出すぎると、ヒザへの負荷が大きくなります。体の真下で着地するよう意識することで、ヒザにかかる衝撃を軽減できます。
4. ヒザを柔軟に使う
・ヒザを少し曲げて着地
ヒザが完全に伸びた状態で着地すると、膝関節に大きな負担がかかります。ヒザを少し曲げた状態で着地することで、衝撃を吸収しやすくなり、ヒザへの負担が軽減されます。これは下り坂を走る際の予防法として特に重要です。
5. 大きな筋肉を活かす走り方
・太ももや臀部の筋肉を意識
ヒザの負担を軽減するためには、太ももや臀部の筋肉を意識的に活動させることが大切です。これらの筋肉の活動によって前方への推進力を高めることで、ヒザにかかる力を分散させながら負担を軽減できます。
・股関節を積極的に動かす
股関節の可動域を広げて使うことで、ヒザにかかるストレスが軽減し、燃費の良いスムーズなフォームを獲得することが期待できます。
ヒザの痛みを予防し、快適なランニングを長く楽しもう
マラソンやジョギングを続けていると、ヒザの痛みは誰にでも起こりうる可能性があります。しかし、ヒザの痛みの原因を理解し、正しい走り方や予防を心がけることで、ヒザへの負担を軽減させて痛みを予防することが期待できます。走る前後のストレッチや、筋力トレーニングなどのセルフケアを入念に行い、正しい走り方を保つことが、ヒザの健康を守る最善の方法です。
ヒザの痛みが生じた場合は、無理をせず休息を取ることも大切です。無理に走り続けると、炎症症状が悪化し、長期的な怪我に発展する危険性があるため注意が必要です。ヒザの痛みが長引く場合は、早期に整形外科の専門医に相談するようにしてください。